giggnet

小 説 劇 場

登場人物


杉本勇

後藤ひろみ

上村幸枝

上村幸子
『幸子』
〜第6話〜

圧倒だった。幸子の話は圧倒的だった。
幸子の想像力は、3匹のケダモノ達を黙らすには充分な程たくましく、そしてリアルで卑猥な言葉で語られていた。 幸子の話を聞いた幸枝は怒りを感じずにはいられなかった。 幸枝にしてみれば、自分の娘が勉強もせずに授業中にそんないやらしい想像をしていた事もさることながら、その想像力のたくましさに同じ女性として ただただ嫉妬してしまっていたのだった。そして幸枝の怒りが言葉として発せられた 。
「このブタ野郎!このメスブタ!売女め!売女め!! スケベでイヤラシイーグチョグチョ売女めー。 売女め−。…あァァ…あァァ…売女、ばいぃぃった…ばいっばいった、ばい、ぅう、ぶわいためー…」
最後は言葉にならずに泣き崩れてしまった。杉本はなんとかなだめようとしたが、幸枝が受けたショックは大きく杉本の力ではどうしようもないものだった。
幸子はそんな幸枝に冷静に声をかけた。
「お母さん。ごめんね」
それは母に対するお詫びの言葉ではなく、同じ女として母を越えてしまった優越感から出た言葉だった。 その言葉によって幸枝の中で何かが弾けた。 突然席を立ち廊下に飛び出した。
「ぶわああおうああぁぁぁぁっぁあをぅばぁぁぁぁぁぁっああー!」
幸枝は言葉にならない言葉を吐き出しながら走ってはいけない廊下を走り抜けた。
杉本は何が起こったのかナニがナンダカわからずにうろたえていると、後藤ひろみは席を立ち幸枝を追いかけた。毅然とした早歩きで。 教室を出た後藤ひろみは廊下の奥にある女子トイレから泣き声が洩れているのに気付き導かれるように入っていった。
「お母さん…。大丈夫ですか…」
後藤ひろみはやさしく声をかけた。
「私は…私は負けたの…娘に、自分が産んだ娘に同じ女として負けてしまったの。私には出来ない。 出来ないわ。私には幸子みたいにあんないやらしい想像をする事なんてできやしないわ。ゥッあぁ…」
後藤ひろみは仔馬のようにかすかに震えている幸枝を愛おしく思ったのか思わなかったのかその事を確認するかのごとく幸枝の肩に手をあてた。
「ひろみ。ねぇ、ひろみ。私はどうすればいいの?娘に負けた私はどうすれば…」
混乱する幸枝を前に後藤ひろみはこう言葉をかけた。
「僕で…僕との行為を想像してみてもらえませんか?幸枝さん」



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